心を癒やす

喪失体験によるGrief(グリーフ/悲嘆)反応

鳥の羽

「喪失体験」とは、死別だけではなく、失恋、転居、卒業などに伴う別れ、退職・失業に伴う社会的役割からの喪失なども含め、様々な「別れ」に伴う心身の体験を指します。

思い返せば、我々は生きていくなかで様々な「喪失体験」をし、大小の心身の負担を乗り越えて成長してきたとも言えます。

そうした「喪失体験」に伴い生じた心身への負担・影響を「グリーフ(Grief)」といい、よく「悲嘆」と訳されます。“悲嘆”と書くと悲しみ・嘆きのような感情を思い描きますが、喪失体験によるグリーフ(悲嘆)は、愛惜の念や、喪失の原因や状況への怒りの感情も含まれますので、一般的な「悲嘆」という言葉よりも広く深い感情が含まれています。

また、「グリーフ(Grief)/悲嘆」によって引き起こされる心身の反応を「グリーフ反応」と言います。具体的には、眠れない、落ち込む、ひきこもる、食欲不振などが挙げられ、身体的反応(体の症状として現れる)、精神的反応(感情、思考など、精神・心理面に現れる)、社会的反応(人・社会との関わり方に現れる)が含まれます。

冒頭にも記載しましたように、我々は生きていく過程で多くの「喪失体験」をし、「グリーフ反応」を現わしてきたことになりますが、死別体験によるグリーフ反応は得に大きな心理的負担を負い、身体への影響も強く出やすい体験になってしまいます。

自身の気の持ちようや時間の経過だけでは、解決できない心身の不調の陥ることもあります。それは、喪失の対象となった方との関係性や双方を取り巻く環境も大きく影響しますので、一概に言えないことではあります。故に、「喪失体験」「グリーフ反応」と一言で表しても、その状況や状態はお一人おひとり異なるもの、「多様」であると考えたほうがよいかと思います。

「多様」な状態といいましても、これまでの多くの知見の積み重ねから主だった反応を挙げることができます。

  1. ショック:実感がわかず、呆然とする
  2. 事実の否認:亡くなった事実を、認めきれない
  3. 怒り:さまざまな方向への怒り
  4. 起こり得ないことを夢想し、願う:「会いたい」気持ちがずっとつづく
  5. 後悔、自責:もっとできることがあったのでは…
  6. 事実に直面し、落ち込み、悲しむ:あとからやってくる悲しみ
  7. 事実を受け入れる:行きつ戻りつする事実の受容と喪失感
  8. 最適応:思い出とともに人生を歩む

数字を打って記載しましたが、この反応がこの順番で現れるとも限りませんし、一通り巡ったら回復するわけでもないと思います。どれかの感情に縛られて行ったり来たりすることもあると思います。

ただ一つ、お伝えしておきたいのは、このような感情・反応が生じるのは自然なことですので、このような状態になってもご自身を否定したり蔑んだりなさらないでいただきたいと思っております。

むしろこのように現れる感情・反応は喪失の対象となった方との絆があってのことであり、ご自身の中に深い愛情があったからこそだと思いますので、疲弊しきったご自身の心身を十分に労わってあげてください。

このようなグリーフ反応がいつまで続くのか?ということもまた、喪失の対象となった方との関係性や双方が置かれた環境によっても異なってくると思います。

どうなったら「回復した」と言えるのかも難しいところです。周囲の者が「元気そうにしているな」「もう○年経ったし…」と思ってもご本人は辛い気持ちを抑え込んで“元気なふり”をしているだけかもしれません。人知れず長い間重い負担を抱え込んだままかもしれません。

ですので、周りの者が判断するのではなくて、ご自身の中で喪失体験の前と同じように生活を送れるようになったとか、グリーフ(悲嘆)を飲み込み、その感情と共に歩みはじめることができた、など自認することができたら、「回復した」のかもしれませんし、そう思っていてもまたグリーフ反応が蘇ることもあるかと思いますが、そんな感情も「自分の一部」だと受け入れてゆっくり様子をみるのもよいかもしれません。

ただ、ご本人も周囲の方も気を付けたほうがよいのが、長期間にわたり、生活や健康に支障を来たすほどのグリーフ反応で苦しんでいる場合は「複雑性悲嘆(複雑なグリーフ)」といわれる精神疾患を発症している可能性もありますので、専門の医療機関(精神科・心療内科など)を受診されたほうが良いかと思います。

寄り添う人と犬の背中

今回は、『喪失体験によるGrief(グリーフ/悲嘆)反応』というタイトルでお話しさせていただきました。

特にペットさんとの死別についての記載としなかったのは、ペットさんを家族同然に思う方が多くいらっしゃいますので、“人”“ペットさん”の別なく「大切な存在を失うことの悲しみ」という大きな枠で捉えてお話しさせていただきました。

しかし、ペットさんを失ったことによる悲嘆反応は、「人の死別による悲嘆反応より軽度では?」という偏見がまだ根強く残っているのも否めず、そうした社会の中で、『公認されないグリーフ』とも言われています。

ペットロス症候群で辛い思いをされている方が「たかがペットのことで」などというような目で見られないよう、今回のような書き方とさせていただきました。

大切な存在を失った方は、その対象が何であれ、“その方と喪失の対象”双方の関係性・事情・背景・環境など相まって、お一人おひとり反応も感情も異なることを大前提にした理解や心のケアが必要だと思います。

参考書籍:大切な人を亡くした人の気持ちがわかる本 ―グリーフケア・理解と接し方―
(著:高橋聡美、法研)

ラベンダーの花とハート
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