
本日はペットロスの方へのソーシャルワーク・サービスの可能性についての論文を紹介したいと思います。
原著タイトルは、『ソーシャルワーカーの新しい機能:ペット・ロスが飼い主に与える影響とソーシャルワーク・サービスの可能性』
…難しそうなタイトルですね。

以下の項目に分けて解りやすくご紹介したいと思います。。
- 論文の背景・結論
- ペットの役割
- なぜペットロスによる悲嘆が引き起こされるのか?
- ペットロスの飼い主に対するソーシャルワーカーの役割
- 役割例:①悲嘆カウンセリング、②喪の儀式、③セルフ・ヘルプグループ
- ソーシャルワーク・サービスの可能性
- 最後に

1. 論文の背景・結論
<背景>
今回ご紹介する論文は、ペットロスは人間の家族を喪失した時と同じように強い身体的、情緒的、認知的なストレスをもたらすにもかかわらず、ペット・ロスによる悲嘆に直面している飼い主に対して,ソーシャルワーカー等の対人援助専門職がどのようなサービスを提供するべきかについての十分な理解があるとは言い難い現状から、ソーシャルワーク・サービスの可能性を検討した内容となっております。
<結論>
現今の社会において,動物との相互作用は人間同士の相互作用と比べてあまり重要でないと考えられているという風潮が拭えないことがあると考えられます。
また、こういった社会背景がペットを失った飼い主が悲嘆作業を進めるためのサービスがあまり存在しないという結果に結びついています。
そういった実情を打開するために,既存のソーシャルワーカー等の対人援助専門職において、クライアントにペットロスの方がいらした場合、自身でカウンセリングする際の最初期に,ペットを失ったことによる飼い主の悲嘆を承認・妥当化することや、ペットロスの実情や、「悲嘆カウンセリング」「喪の儀式」「セルフ・ヘルプグループ」といった行動を促すなどして、ペットロスへの理解を示し、喪のプロセスの遂行を促すことで、ソーシャルワーク・サービスの拡充の可能性が期待できるのではないかと述べられています。

2. ペットの役割
改めて、ペットが飼い主の生活の中で果たす役割を書き出してみましょう。
重要な他者としての「保護者」や「兄弟姉妹」、「友人」、「配偶者」と同等であると感じている方が多いかと思います。
また、人と動物の絆の研究の第一人者である米国の児童精神科医のLevinson(1978)は、ペットを飼育することは、飼い主の自己概念形成を促し、自己評価や自立性、共感性を高めると指摘しているそうです。

3. なぜペットロスによる悲嘆が引き起こされるのか?
論文では、その要因としてペットと飼い主が擬似親子のような愛着対象であること、人間が子供から成人へと成長する過程、成人してからもそれぞれの生活においても、ペットが情緒的な大きな影響を与える存在であることを述べています。
また、上述のようにペットは家族同然の存在と感じている反面、実際の人間関係の煩わしさはなく、飼い主からの最小限の愛情や注意だけで十分に幸福と感じてくれますので、人間関係以上に愛着対象として捉えられていると思います。

4. ペットロスの飼い主に対するソーシャルワーカーの役割
重要な他者(人間)を失った際、残された人々が悲嘆反応を示すのは自然なことであり、通常は専門的治療を必要とはしません。 同様に,飼い主が「ペット」を重要な他者として捉えていた場合、ペット・ロスの直後から悲嘆反応を示すことは自然なことであり、通常は専門的な介入や治療は必要としません。
しかしながら、ペット・ロスによって引き起こされた悲嘆が社会的な理解や承認サポートを得にくいことを考慮すれば*、ペットとの死別・離別後の早い段階から専門的な介入や援助を提供することは、飼い主の悲嘆表出を促し、ペットのいない日常生活に再適応することを促すのではないかと考えられています。
実際にどのような専門的介入・援助があるか、以下に論文からの抜粋をご紹介致します。

5. 役割例:①悲嘆カウンセリング、②喪の儀式、③セルフ・ヘルプグループ
①悲嘆カウンセリング
悲嘆カウンセリング等の専門的援助は、残された人々が喪の課題を進めていくには有効であると言われています。
悲嘆カウンセリングの目的を「残された人々」と「援助する側」という視点で例示いたします。
<残された人々>
- 喪失を現実のもとして捉えられること
- 自身の感情を認識し感じることができること
- 故人のいない生活に適応すること
- 喪失の意味を見出すこと
- 故人を情緒的に再配置すること
- 深く悲しむための時間を提供すること
- 正常な悲嘆行動についての理解を増やすこと
- 悲嘆に関する個人差を許容すること
<援助する側>
- 残された人々の防衛機制や対処方法を吟味し、助けること。
- 残された人々の行動や症状が病的かどうかを判断し、必要に応じて抗うつ剤の使用や認知行動療法等の治療に繋げることが求められています。
また、悲嘆を経験している子どもを援助する際の注意点の記載がありましたので、併せてお示し致します。
まず,援助者や周囲の大人には,
- 死別について事実を曖昧に表現したり、ごまかすのではなく、一緒に答えを見つけようとする姿勢が求められる。
- 子どもが感じたり考えたりしていることに関心があることを伝え、むやみに指示やアドバイスを与えないことが重要である。
- 子どもの発達段階に応じて,死をどのように、どの程度理解しているかを把握するだけではなく、死に対する表現方法が子どもによって異なることを理解し、子どものペースを尊重することが求められる。
子どもは同じ質問を何度もすることがあるが、それは普通のこととして理解すること、子どもは「どうしてこんなことが起こったの」と質問してくることがあるが、明確な答えを期待しているわけではなく、他者に尋ねることで自問自答していることを理解する必要がある。加えて、子どもは6歳を超える頃には、自分と死を関連づけ自責の念を感じることがある。よって、「あなたが悪いことはない」、と大人が何度も伝えていくことが大切である。

②喪の儀式
研究者らによると、治療的な喪の儀式とは、「残された人々が死を認識すること、失った人々を思い起こすこと、もしくは、失った人々に対する様々な考えや感情を探索し、明確化し、表現し、統合し、最終的にはそれらを表明する機会を提供するための構造化された方法」であると定義されているそうです。
この定義に照らし合わせると、葬儀は、社会的に許容された最も治療的な儀式であるといえるのではないかとのことです。葬儀や葬儀のようなものは,残された人々が故人との関係を再確認し、心を落ち着かせ、故人を手放さなければならないことを認識するために役立つと指摘しています。

③セルフ・ヘルプグループ
セルフ・ヘルプグループは、重要な他者を失くした人々が抱える問題を、同じ立場で理解し支援することを促すことができます。セルフ・ヘルプグループへの参加が遺族にもたらす効果について、「同じ心の苦しみを持つ者同士が集まり、苦しい胸の内を語り、他の人の苦しみを聴く中で、お互いに支え合い、苦しみを分かち合い、この苦しみは自分一人ではないことを知り悲嘆から立ち直っていくことができるようになる」と述べられています。
また、死別を経験した子どもへの援助として、同じ死別体験を持つ子どもたちと時間を共有させることの重要性を指摘しています。子どもといえども、大人と同じように共有・共感で安心感を得ることは変わらないようです。
このように、残された遺族にとって、セルフ・ヘルプグループへの参加は、生活の大きな変化や社会への再適応への過程の中で、問題を解決することに役立つとされています。

6. ソーシャルワーク・サービスの可能性
ペットにより強い愛着がある飼い主ほど,悲嘆反応は深く激しくなるにもかかわらず,ペットを失った飼い主の悲しみが深刻であることへの社会的な認識や理解が十分でないため,飼い主が適切な時期に悲嘆を表出することには困難が伴うのが実情です。
その背景には,現今社会において,動物との相互作用は人間同士の相互作用と比べてあまり重要でないと考えられているという風潮が拭えないことがあると考えられます。
また、こういった社会背景がペットを失った飼い主が悲嘆作業を進めるためのサービスがあまり存在しないということに結果に結びついています。
そういった社会的実情があって,ペットの飼い主は「自身とペットの関係性」や「ペットを失った悲しみ」について、本来何でも相談したいはずのソーシャルワーカー等の対人援助専門職に対して,語ることを躊躇するかもしれないと指摘されています。
そういった実情を打開するために,既存のソーシャルワーカー等の対人援助専門職において、クライアントにペットロスの方がいらした場合、自身でカウンセリングする際の最初期に,ペットを失ったことによる飼い主の悲嘆を承認・妥当化することや、ペットロスの実情や、既述の「悲嘆カウンセリング」「喪の儀式」「セルフ・ヘルプグループ」といった行動を促すなどして、ペットロスへの理解を示し、喪のプロセスの遂行を促すことで、ソーシャルワーク・サービスの拡充の可能性が期待できるのではないかと述べられています。

7. 最後に

紹介論文:ソーシャルワーカーの新しい機能:ペット・ロスが飼い主に与える影響とソーシャルワーク・サービスの可能性(著:佐藤 亜樹)
https://researchmap.jp/g0000218048/published_papers/3994671
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