心を癒やす

書籍紹介|グリーフカフェ ―大切な人を亡くした人たちが語ったこと―

2025-08-31

リスのお茶会

今回ご紹介する書籍は『グリーフカフェ ―大切な人を亡くした人たちが語ったこと』(佐藤奈央著、論創社)です。

本サイトは「ペットロス」に関する情報発信を目的にしておりますが、ペットロスのお話をするにあたって、必ずと言っていいほど出てくる言葉が「喪失」「悲嘆」です。

上記のように、「喪失」の対象は様々でありますが、そこから生じる心身への負担は「悲嘆」「グリーフ(Grief)」という共通の言葉で表すことができます。

今回ご紹介する書籍は、“大切な人”との死別を経験された方達の体験談ですが、“大切な存在”という意味では、人・ペットさんの別もないと思いますので、取り上げさせていただきました。

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以下のように順を追ってご紹介したいと思います。

  • 本書をおすすめする理由
  • 本書の舞台
  • グリーフカフェが必要とされる理由(グリーフを吐露できない背景)(私見)
    • 有害支援
    • グリーフリテラシーの低さ
    • アイコンシャスバイアス
  • まとめ
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・本書をおすすめする理由

大切な存在と死別・生別された方の中には形容し難い喪失感や悲しみを抱え、時には心身の健康にまで影響を及ぼしてしまう方もいらっしゃるかと思います。そのような状況に陥った時、「自分は他の人と違うのでは?」「こんなふうになるのはおかしいのかな?」「こんな状態がいつまで続くのだろう?」と更に不安になり、誰にも本心を打ち明けられず負のスパイラルから抜けられなくなる状態に進展してしまうかもしれません。

でも、本書では、そのような悲嘆に暮れる方達が安心して本音を打ち明けることができる場所があること、そういった方達のために場を提供・運営されている方達がいらっしゃること。そこでは同じような思いを持つ方と、共感しあい、心の負担を分かち合うことができること、それが心の整理につながり、また明日に向かって歩き出せること、が紹介されております。

年齢・性別・バックグランドの異なる方達のグリーフのお話を読ませていただくことで、お一人で悲嘆の只中で苦しんでいらっしゃる方、またはそのような方の支えになりたいと思ってらっしゃる方の、思考の変化や行動へのヒントになるのではないかと思いましておすすめさせて頂く次第です。

ただ、具体的な死別体験の記載がありますので、読まれる方のお気持ちの状態によっては辛さが増してしまうかもしれませんので、少し前向きな行動を…と思い至ったらお手に取ってみてください。

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・本書の舞台

本書は、2019年10月にTOKYO MXで放送されたドキュメンタリー番組の内容を書籍化したものだそうです。

舞台は、東京都港区にて活動されている『NPO法人暮らしのグリーフサポートみなと』さん。こちらは、グリーフを抱える方達各々の気持ちをお話できる会を運営されてらっしゃいます。

お話の会には簡単なルールがあり、ファシリテーターという司会の方がルールの説明をされて、参加者が順繰りにお話できるようにファシリテーターが調整しながらお話会を進行されているそうです。このように、ルールやファシリテーターがいることで参加者が安心してお話できる場作りをされています。

ルールの詳細は書籍の中で丁寧に説明されておりますので、こちらでは割愛いたしますが、「無闇に励まそうとしない」「私の方が大変・あなたはまだ大丈夫よ…などの比較をすること」「トラブル回避のため会以外の場で交流を持たないこと」などが挙げられています。

これは、主に「有害支援」という悪意なく善意のつもりで掛けた言葉や手助けで、当事者の心を害してしまうことを避けるための対処をルール化されているものと思われます。

雰囲気は気軽にお話できる「カフェ」。運営側がお茶やお茶菓子を用意して、参加者はそれをいただきながら和やかな雰囲気で時には笑い声も混じるような明るさや温かみのある会だそうです。

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・グリーフカフェが必要とされる理由(グリーフを吐露できない背景)(私見)

 以下からは私見になりますが、グリーフカフェが必要とされる理由(グリーフを吐露できない背景)として、・有害支援、・グリーフリテラシーの低さ、・アイコンシャスバイアスが絡み合っているように感じ受けましたので、併せて紹介させていただきます。

(※ここで挙げている3点がグリーフを吐露できない主要な点ということではございません。複雑な背景の一つとして考えられるのではないか…という私見でありますこと、ご了承願います。)

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  • 有害支援

グリーフを抱えてらっしゃる方の中には、そのお気持ちを吐き出したり、整理することもできずに一人懊悩されている方もいらっしゃるかと思います。それができない背景には、ご自身の状況やお気持ちを誰かに話すことで、「有害支援」によってさらに傷つくことを恐れている場合もあるかもしれません。有害支援を心配せず、安心してお話できる『グリーフカフェ』は、苦しい状態から抜け出せなかった心を休めるためのオアシスのようなカフェだと思います。

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  • グリーフリテラシーの低さ

著者曰く、「“グリーフ”という言葉をもっと知って欲しい」「グリーフカフェという存在を知って欲しい」「グリーフリテラシーの低さをどうにかしたい」という思いから書籍化を考えたそうです。そういったお気持ちに共感するところもあって、ご紹介させていただいた次第なのですが、『グリーフリテラシー』という表現が腑に落ちてとても印象的に思いました。

この言葉は、本書の中で専門家としてインタビューを受けている高橋聡美先生によるものですが、日本の社会では死別体験をしていない人はいないはずなのに、大切な人を亡くした人への理解や寄り添い方(グリーフリテラシー)がすごく低いと仰っています。そこには日本文化独特の背景に「死を忌み嫌う・死人が出た家=穢れ」のような文化が根強くあり(日本が神道・仏教入り混じった文化であることも要因?)、公に死別体験を話すことがタブーのようになっていることを指摘されていました。

そういった背景も手伝ってか、話す側は「話せない」「話してはいけない?」、聴く側は「どう受け止めたらいいか解らない」のまま現代に至っているのではないかと思います。しかし、多様化を容認するこの時代になってもグリーフを語れないのは文化の発展・成熟度としては悲しい現実と思わざるを得ません。

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  • アイコンシャスバイアス

また、本書には実際にご自身のグリーフを語っておられる方が数名登場されています。個々のエピソードは本書に委ねますが、普段グリーフを語れない背景に『アイコンシャスバイアス』が影響しているように思い至りました。

アンコンシャス・バイアスとは、日本語で「無意識の思い込み」などと表現され、誰にでもありうるものです。例えば、「男性だから○○では?」「女性なのに△△?」「子どもなのに□□?」「年配なんだから◇◇!」などなど。我々は知らず知らずに刷り込まれたイメージを持ったまま世の中を見ていることがあります。

頭では差別的な表現や対応がNGなのは理解していても、日常生活を送る上では、瞬間的に物事を判断する際に、男性・女性など様々な“属性”からイメージされる固定概念というアイコンシャスバイアスが働く場合が多くあります。それを意識して差別的な対応にならなければ良いのですが、「無意識の思い込み」故、意図せず傷つけてしまう可能性があることも現実です。また、第三者的な立場でアイコンシャスバイアスのないように意識できても、自分自身をアイコンシャスバイアスで捉えてしまっているケースもあるかと思います。

私が、普段グリーフを語れない背景に『アイコンシャスバイアス』が影響しているように思い至ったのは、登場人物の中に「年配の男性」「子を失った母親」「母を失った娘」と形容できる方がいらっしゃるのですが、「いい歳の男がこんなことで」とか、「子を失った母親なのに」という視線に苦しんだり、「母を失った私(娘)はこんなに苦しいのに、他の家族とは理解し合えない」など、他人から向けられる視線や押し付けられるイメージ(≒アイコンシャスバイアス)に苦しみ、本音を言えない、理解し合えないという実情が浮かび上がっているように思えたからです。また、本当のところは「他人」ではなく「自分自身」にアイコンシャスバイアスのフィルターを掛けてしまって、本音を曝け出せないこともあるのかと思いました。

家族構成一つとっても、父親・母親・祖父・祖母・息子・娘・兄・弟・姉・妹など、それぞれの立場や関係性があり、家庭の中で“何か”が起きても対処や思うことも異なるでしょう。ペットさんを含む家族の誰かと死別しても、深い悲しみや喪失感から抜け出せない方もいらっしゃれば、「私」が感じているほどには「あの人」は思っていないと感じることもあると思います。そうした温度差がある故に、家族であってものご自身の辛さを共感してもらえないから共有しないという選択をする場合も多々あるかと思います。しかし、立場が変わると、「父親の自分は落ち込んでいられない」とか「母親だから気丈に振る舞わなければ」「両親を元気づけるために元気でいなきゃ」など、それぞれの立場でその役を演じている可能性もあります。家族であっても、それぞれの本音がどこにあるか解らなくなることもあるのではないでしょうか?これも、立場(役割)に応じたアイコンシャスバイアスが働いているからなのかなと思ったりしました(もちろん良い作用もあると思います)。

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・まとめ

有害支援、グリーフリテラシーの低さ、アイコンシャスバイアスを気にしなくて済むような、実生活(の役割)とは切り離された場所・人間関係の方が、本心を話しやすくなるのだと思います。

最初は上手く話せなくても、言葉として発していくうちに、自己理解が進み・言葉での整理もしやすくなるでしょうし、他の方のお話に耳を傾けることで、他者理解と自己理解が進み、「分かち合い」が生まれ、それぞれの安堵につながるのではないかと思います。

ペットさんと死別・生別された方にも、このような事例は当てはまるのではないかと思います。いろんな障壁で本音を言えないで苦しんでいるかたもいらっしゃるかと思いますが、安全な場所で本音を語れる場があること、話すことで心に変化が生まれること、全部を理解できるわけではないけれども「分かち合う」ことで心の重荷を軽くすることができるかもしれないことを、お伝えすることができていれば幸いです。

本書を手に取って、「グリーフとは?」から自己理解を深め、「グリーフカフェ」のような拠り所があることを知っていただき、身近にそんな場所を探せるようになったら実際に訪問してみて、癒しを得て、そして誰かの癒しになる…というような好循環を得られれば何よりかと思います。

私もいつか、人・ペットの別なくグリーフを語り合えるような場所作りがしたいです。

ラベンダーの花とハート

参考ページ:情報&体験ひろば

参考書籍:グリーフカフェ ―大切な人を亡くした人たちが語ったこと (著:佐藤奈央、論創社)


グリーフカフェ 大切な人を亡くした人たちが語ったこと (論創ノンフィクション 61) [ 佐藤奈央 ]

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ラベンダーの花とハート
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